約 99,176 件
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1096.html
分裂の某シーン。 『涼宮ハルヒの驚愕』 ハルヒは一気に喋り終え、大きく深呼吸してから、そして奇異な目を俺の隣に向けた。 「それ、誰?」 「ああ、こいつは俺の……」 と、俺が言いかけた途中で、 「セフレ」 佐々木が勝手に回答を出した。 …ちょっとまて、今なんて言った? ハルヒの顔が形容しがたい驚愕めいた憤怒を交えた顔つきになってから 古泉のケータイのベルが鳴り始めたのは言うまでも無い。 ~DEAD END~
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1259.html
「彼女を、つけてみないか」 こいつは突如として俺の前に現れ、その誘いの言葉をのたまったが、俺はどうしても乗り気になれなかった。 あの悪夢のようなエセSOS団誕生に至る日々は、ゆっくりと土に還っていく桜の花弁にも気づかないままに過ぎてゆき、日本はすっかり新緑の5月を迎えていた。 これは全ての物事がひとまず小康状態に落ち着いた、そんな時期の事だ。 この土曜は久しぶりに不思議探索が休みで、その午前はまさに神がこぼした―――カチューシャの女神に当てはめるのは嫌だが、皮肉にもまさしく文字通りの―――奇跡の時間だった。 それで本当に気が緩んでいたのだろう。 妹のフライングボディプレスをまともに受けた俺は、視界先の天井がグラグラと歪む最悪の目覚めの後、 母親からこれまた図書館へ本を返しに行って来いと言う面倒くさい司令を受け、俺はものの見事に、ていのいいパシリに仕立て上げられてしまった。 かくして、ついぞ俺の土曜の午前に平穏が訪れる事は無かったのである。 「やあ、キョン。ここで出会うとは最高のタイミングだよ」 そんな道中の事だ。下手をすれば空の蒼さにも難癖つけたくなるくらいに不機嫌な俺を こいつは呼び止めた。こいつは俺を認めると、あたかも巡り会うべく何世紀も生まれかわった人生の伴侶をとうとう発見したかのような瞳の輝きをもって、俺に近づいてきた。こいつの目は本当に綺麗だ。 それは認めよう。 しかしだ。勘弁してくれ、まだこれ以上俺から土曜の午前の平穏を奪おうと言うのか―――佐々木よ。 「どうやら機嫌がよろしくないようだね。さしずめゆっくり寝たいと思っていた土曜の午前を妹さんに無理矢理起こされたというところだろう」 そのとおりだ。全く、起こすのに普通ボディープレスするか? わき腹にエルボー入ったんだぞ? 今でもズキズキする。 俺は機嫌任せに激しく口角泡を飛ばしたが、それを苦にもせず、佐々木はくっくっと笑いを無理に押し殺したような低い声を喉の奥で鳴らした。 「彼女もまだ、多少強引であれ何らかの形でスキンシップをとりたいと思う年頃ということなのだろうさ。許してやってくれたまえ」 そういう風に聞くと、何となく愛嬌が出てくるから恐ろしい。おお、兄よ、妹の兄たる俺よ、お前には時に心を鬼にして厳しく妹を叱る事も必要なのではないだろうか。 「無理だね。君にできるはずがない」 なぜか佐々木の言葉は自信に満ちていた。 以前にこいつが『断言する人間の言葉は信じてはいけない』という格言の孕む矛盾性をうだうだと四方山話を交えて語っていた頃を思い出して、ふとツッコミそうになったが、 思い直すとなるほど、今までの経験上、確かにどうも俺はイタズラな妹をきつく叱ったり怒鳴ったりする事ができないらしい。 喉元まで込み上げてきた言葉を引っ込めた時、雲ひとつ無い空の蒼さがやけに心地よい事に気づく。 どうやら佐々木と話すと、調子が狂う。こいつの話術なら英会話の教材だろうが怪しい壷だろうが仏壇だろうが購買意欲をそそられそうだ。気をつけよう。 「で、今日はどうしたんだよ。さっきタイミングがどうとかいってたな」 佐々木はその言葉で、まるで催眠術にかかっていて、ようやく我に返った主人公の唯一無二の友人のような顔をして街の方へ続く道を向いた。 倣って俺も見る。あれは…… 「そうだ、そうだ。キョン」 「彼女を、つけてみないか」 目を凝ら―――さずとも、俺にはすぐ分かった。いや、いまいましくも分かっちまったんだ。俺の乏しい知識と記憶が、あの遠ざかる黒いうねりを材料に、一瞬で脳内情報バンクからワンパーソンを検出し、それ以上の候補を挙げようとしない。 そう、奴は佐々木の言葉を借りるなら地球外知性の人型イントルーダー、長門の言葉を借りれば天蓋領域。俺にいわせればクイーン・オブ・ディスコミュニケーション意味不明理解不能長門衆以外宇宙端末。 本人に言わせるならば、周防九曜。もしくは九曜周防。 そいつが街の方へぶらぶらと歩いていくではないか。ちなみに、佐々木は普段と変わらない私服であったが、九曜はどうも制服のままらしい。どうも、というのは俺の見える角度からでは、体のほとんどがあの凄まじいボリュームの髪で覆われていて服装がよく分からんからである。 しかしまあ、これまた歩くのが遅い。ネジが切れかかったゼンマイの人形みたいなスピードで、緩やかに繁華街へ歩いていくのをみていると、本当に時間の流れすら違うような辺ぴな場所から来たということが分かる。 しかし、どうした事だ、佐々木、アイツの後をつけるとは。 最初にも言ったが、俺はどうしても乗り気にはなれなかった。大体、俺の中にアイツへの敵がい心はいまも変わらず、黒い塊となって残っている。本来なら関わることを一番避けたい存在なのである。 「彼女を見つけたのは本当に偶然なんだ。ついさっき、そこでね。声をかけようとも思ったが、それよりも後をつけた方がいいと判断した」 佐々木の意を得ない俺は、分かったんだか分かっていないんだかハッキリしない顔で、キラリと光る二つのガラス水晶を見つめた。すると佐々木も気づいたらしく、肩をすくめながらこう言った。 「彼女とはこれからもある程度の付き合いが予想されるわけだ。観測者と観測対象として、望む望まないに関わらずにね。そうなると、彼女とのある程度のコミュニケーションが必要になってくる。 だけど、どうも上っ面の言葉でのコミュニケーションでは上手く出来ない、というより彼女が興味を示さないようでね。 それはキョン、君は身を以って分かっているだろう?」 ああ、もはや言葉が通じているのかもよく分からんレベルだな。 目の焦点も合ってはいるんだが、決して俺たちが価値を見出せそうも無い中空を凝視しているし、何に興味を持っているかは俺の関わりの範囲(不承不承、仕方なく関わってしまった程度の範囲だ)では見ていてもサッパリ分からん。 「そう。だから、こっそり彼女の後をつけて、彼女の興味あるものを調べるんだよ。私生活を覗けば、必ずそれは現れるはずだ。そもそも、宇宙人の私生活自体が中々興味深く面白い。もちろんインタレスティング、だよ」お前の言い分は分かった。しかしだな、なぜそれに俺が関わらなくてはいけないのだ。 俺にしてみればあの集団ではお前以外は思い出のアルバムに一秒でも長く残したくない相手なんでね。 正直、興味があるものが何か分かってもそれを話題に親睦を深めようなんて微塵も思っちゃいないんだが。 「個人的には嬉しいセリフだが、そういってくれるなよ。 僕だって未知の宇宙人である彼女をたった独りで付きまとうのはいささか心細いと思っていたところだったんだ。君がいれば心強い」 それも個人的には嬉しいセリフだが、実際アイツが宇宙パワーで襲い掛かってきても役に立つとは思えんがね。 「別に危害を加えられるなんて思っちゃいないさ。メンタル的な意味だよ。独りでこそこそ後をついてまわるのと、 二人でひっそり尾行するのではどちらが気が楽かは、明白だろう」 まあそうなんだが……っておい、先行くな、俺はまだ行くとは…… 「さあさ、いくら何でもこれ以上喋っていると見失ってしまう。キョン、行こうか」 神の力に関わる人間は、プロセスはどうあれ、人の言う事にあまり耳をかさないのか? やれやれ、仕方ない。あいつ―――天蓋領域の使者様が日常的に人に害を与えていないかどうかの見張りの意味でも、ついていくとするか。おつかいの本は後で返せばいい。 かくして俺たちは、ブリキのおもちゃの如くのろのろと歩を進める九曜の後へ歩を進めていったのだった。 隣の佐々木の顔が少しニヤリと歪んでいる。 ……お前、インタレスティングは建前で、実は結構エキサイティングを期待しているだろ。 勘弁してくれよ、宇宙人が急に無差別に人を襲い始めたらなんて妄想はどこかの団長様だけで十分だからな。2時間後、ゆるゆるとむしろ不自然なほどゆっくりとした歩調で坂を下っていく クイーン・オブ・ディスコミュニケーション意味不明理解不能長門衆以外宇宙人端末を、俺たちは何か物悲しい気持ちで眺めていた。 「……思ったんだが」 佐々木が、疲れを滲ませた顔でまるで誰に言うでもないように言った。瞳の光が俄かに霞んでいる。 「概念が違うのかも知れない。僕たちには意味を見出せない事でも、実は彼女にしては世紀の大発見だったのかも」 そうはいうがな、佐々木。 30分近くパチンコ屋前の宣伝のネオン掲示板を眺めて、また30分くらいあのハンバーガー屋のピエロの人形とにらめっこ。 そして散髪屋の前でクルクル回ってるあの変なやつを30分観察後、最後に広場の噴水を30分ほど見てるだけって、それ絶対世紀の発見にはならないだろ。 最初こそ佐々木もパチンコ依存症の危険性を語ってみたり、ハンバーガーのネズミ肉がどうとか言っていたが、後半になるとうんちくは失速し、今に至る。 この理屈屋がここまで物静かだと少し恐ろしくもある。 「……ともかく、今度会った時に尋ねてみる事にするよ」 ひょっとして、「ド●ルドから何か得られるものはあったか」なんて聞くつもりじゃないだろうな。 ともかく、俺としてはとりあえず安堵の溜め息をついても良い頃だろう。 こいつは私生活において意味不明ではあるが、地球人に迷惑はかけていないようだ。 「さて、もうそろそろお昼だ。どうしたものかね―――ん?」 どうした? 何かあったか? 「あそこは……」 佐々木が指した先は保育園だった。それこそどこにでもある何の変哲も無い保育園。問題なのはそこに九曜が入っていくって事だ。 おいおい、アイツが入ったら間違いなく不審者で通報されて警官の質問攻めにあの天蓋流話術で対応してしまうだろう。ややこしい事態は避けられねえぞ! 似たような考えに行き着いたかどうかは知れないが、俺たちは足早に保育園の門の方へ向かって行った。しかし、飛び込んできた光景は、少なくとも俺の想像とはあまりにもかけ離れていたものだった。それは…… 「あー、すおーねーちゃんまたきたー」 「くよーねえちゃーん!」 子供に大人気のくよーおねえちゃんだった。 あまりの驚きに脳の処理落ちもいいところで、こいつがここに来たのが初めてではない、と言う認識に至るまでにすら3秒ほどかかった。 どういうことだ、どうしてこんな歓迎ムード? Why? なぜ? 隣を見ると、佐々木もやはり驚いたようで、大きい眼をさらに大きく丸くしていたが、すぐさま猫のように嬉しそうに目を細めてこう言った。 「驚いた。サプライズド、というよりアメイズドだね」 九曜の呼ばれ方はまちまちだった。あの名乗りでは仕方ない。俺も周防だか九曜だか未だにわからんのだから。 しかしあいつはまた、こうしてみているとかなり上手く子供の中に溶け込んでいるように見えた。 表情こそまるで楽しげではないが、それなりに真面目にケン、ケン、パーと遊びに興じているし、 少年が物知り顔で昨日先生に教わったのであろうタンポポの正式名を教えてくれるのにもそれなりに聞き入っている。 背中にのっかかる少女がいれば、重みなど感じていないようにすっくと立ち上がり、それが少女の無邪気な笑顔を呼ぶ。 そうしているうちに、保育園の先生がシートを広げ、子供を上に座らせた。昼食にするらしい。ああ、俺のところもそうだった。保育園での土曜日の昼は外でパンを食うんだった。 九曜も手招きされ、座り、パンが配られた。ゆるやかに口元に運び、小さく口を広げ、一口かじってこう言った。 「―――――甘い―――――」 「ねーちゃん、これには『コクトー』ってやつがはいってるから、あまいんだぜ」何となく合点がいってきた。多分こいつ、本気でネオンサインにもクルクルにも噴水にも興味津々なんだ。 俺たちにしちゃなにも意味を感じない事が、あいつは新鮮だったんだ。個人的興味で人と接しようとも対人言語処理能力では、人の相手には決してされない。 だから行き着く先が物怖じしない、子供だったって訳だ。 思えば宇宙から来て日も浅いあいつにしてみれば保育園に通う子供と同じくらいしか地球での経験値は無いんだった。 「……行こうか」 佐々木がさも満足そうに歩き始めた。 「分かっただろう、キョン、彼女は君が思うよりずっと安全みたいだよ」 ああ……っと、ちょっと待て、だからといってこれで九曜が完全に安全と判断したわけじゃないぞ。俺たちに危害を加えた事も忘れちゃいねえ。 まあ、日常的にこの宇宙人に目をギラつかせる必要はなくなったという意味では……こら、佐々木、笑うな。 だが、なんとも清々しい気持ちになっているのも事実だ。あんまり認めたくはないが。 むかつく不良が捨て猫にパンをあげてるのを見たときのような気持ちだ。 「さてキョン。もう彼女をつけるのは終わりにしようと思うのだが」 ああ、もういいだろうよ。それより腹が減って仕方が無いんだ。どこか食いにいこうぜ。 「くっくっ、まあ、昼は付き合ってくれた礼を込めて、奢らせてもらおうじゃないか」 ありがたい、久しぶりに人に何か恵んでもらえる気がするよ。俺はそう言いつつ、サイフの中を思い出していた。少し寒くなるが、まあ仕方ない。 今度の不思議探索は早く行くさ。 そうして俺たちは九曜をのこし、五月晴れの元、適当なレストランを探し始めたのだった。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1874.html
キョンと佐々木さんが戻ってきたのは、花火大会が終わって、しばらくしてからだった。 僕と鶴屋さん、朝比奈さん、それに長門さんと朝倉さんは、花火が打ちあがる前に別荘に戻って来て、涼宮 さんと古泉くんも少し遅れて戻ってきた。 あの人混みの中じゃ、バラバラになるのは目に見えていたから、花火大会が始まる前に別荘に戻ってこよう と鶴屋さんが言ったので、僕等はそうしたのだが、キョン達は二人だけで花火を楽しんできたようだ。 戻って来た二人を見て、鶴屋さんはいつもの如く二人をからかったのだけど、僕が思ったのは、二人の雰囲 気が、少し違ったものになったということだった。 もともと、キョンと佐々木さんはとても仲がよく、かなり親密な間柄だ。谷口なんか、佐々木さんのことを 「キョンの奥さん」なんて言っているけど、案外間違いじゃないと、僕でさえ思う。 それが、何と言ったらいいのか……うまく言葉にはできないのだけど、絆がさらに深まったというか、一段 階進んだとでもいうべきか…… 中学生のときのプ-ルでの出来事を思いだすけど、何となく鶴屋さんのように、簡単にからかえないような、 そんな気持ちになった。 花火大会から戻って来て、俺は古泉と国木田を誘って、ホテル『鶴星』の露天風呂で汗を流した後、別荘の 自分の部屋に戻った。 それにしても、この部屋に戻る度に、強烈な違和感を感じる。洋風の建物と扉なのに、純和風の畳部屋。メ イドさんが敷いてくれた布団。 その布団に、身を投げ出して大の字になり、天井を見上げた後、目を閉じて今日のことを思い返す。 花火の光が照らしだした闇夜の中に浮かんだ佐々木の笑顔は、本当に綺麗だった。この夏の、最高の思い出に なりそうな気がする。 だけど…… これは誰にも言ったことがないのだが、時々俺は不安に襲われることがある 高校に入って、俺は変わったとよく人から言われる。人間的に成長した、と。 それは佐々木のおかげだと俺は思う。俺を親友と言ってくれる佐々木が一緒の高校にきてくれて、本当によかった。 だからこそ、俺は佐々木の親友と呼ばれることにふさわしい人間になりたいと思っている。あの七夕の願いに書いたように。 しかし、同時に得体のない不安に囚われる。それはいつか、佐々木が俺の傍からいなくなるんじゃないかというものだ。 俺は佐々木に何を求めているのだろうか。時々、自分のことがわからなくなる。 誰かが、扉を叩いている。 俺は体を起こし、鍵を開けた。 「さすがにまだ寝てないようだね」 扉を開けて、顔をのぞかせたのは佐々木だった。 他の連中はもう寝たのか? 「まさか。まだ、10時もないよ。君が寝ていないように、みんな起きているよ」 何をやっているんだ? 「涼宮さんの部屋に集まって、古泉君が持ってきた人生ゲ-ムで遊んでいる。盛り上がっていたよ」 人生ゲ-ムね。生きているだけで、十分面白そうな連中の集まりに思えるのだが、ゲ-ムの人生を楽しむとは 何か合わない感じがする。 「月並みな進学とか、就職とか出世とか、確かに涼宮さんや鶴屋さんには似合いそうにはないね。だけど、前 にも言ったとおり、涼宮さんは言動がエキセントリックなだけで、根は普通の女の子だよ。人並みに興味はある はずだ」 そんなもんかね。まあ、それなら、古泉にも希望はあるな。 佐々木は、俺の部屋に上がり込むと、俺がしていたように、俺の布団の上に大の字になって、横になる。 おい、佐々木。そこは俺の寝床なんだが。 「自分のうちじゃベットだからね。こうやって思いっきり手足を伸ばして寝転がてみるのはいい気持ちだよ」 やれやれ。なんなら、部屋を変わってもいいぞ。ロココ調じゃ俺も落ち着かないとは思うが。 「相変わらずだね、君は」 くっくっくっとおかしそうに佐々木は笑う。 「キョン、そんなところにいないで、君もこっちにおいでよ。時間はあるんだから、ゆっくり話そうよ」 俺と佐々木は寝っ転がったまま、いろんなことを話しだした。普段、こいつと一番話しているのに、しゃべり だすと、本当にいろいろしゃべりたいことが出てくる。 中学校の頃の出会いから、俺も予想していなかった一緒の高校入学を経て、文芸部入部や、涼宮たちとの出会 い。佐々木と共に学び、遊び、そして今日の旅行。 まだ、高校生活一年の半分しか過ぎてないのだが、すごく充実した高校生活を送っている。それは佐々木のお かげである。 なあ、佐々木。 「うん、なんだい、キョン?」 ありがとうな、北高に来てくれて。お前が北高に入学してくれたおかげで、俺の高校生活は楽しいものになった んだ。感謝しているよ。 佐々木が俺に顔を近づけてくる。きれいに整った、美しい顔に、涙が流れている。 佐々木。どうしたんだ? 「・・・・・・礼を言うのは僕の方だよ、キョン。君がいなかったら、僕が北高へ入学しなかったら、こんな充実した 学生生活は送れないと思う。僕の決断は間違ってなかった。わた・・僕は嬉しいんだ」 笑顔と涙が混じった佐々木の顔をそっとハンカチで拭いてやる。 天井を二人で見上げていた。 いろんなことを語り合って、時間はかなりすぎていた。静寂が周囲を支配していた。 「何か、夢の世界にいるような気分だよ」 花火の時もそんなことを言っていたな。 「・・・・・・”現し世は夢、夜の夢こそは真”」 それは江戸川乱歩の言葉じゃなかったか?お前から、昔聞いた覚えがある。 「良く覚えてくれていたね。『幻影城の城主』を自称していた乱歩が好んだ言葉さ。現実と思ったものが夢で、夢と 思ったものこそが真実であるという、いかにも作家らしい言葉だね」 まあね。だけど、佐々木。俺とお前がここにいることが、そして今までの時間が夢だったなら、俺は現実を拒否するよ。 佐々木が俺の右手に、自分の左手を絡めてきた。 「邯鄲の夢じゃないよね、今までの時間は」 もちろん。大変なことも多いけど、俺とお前の時間は現実だよ。今までも、そしてこれからも。 佐々木。 「なんだい、キョン?」 ”どこにも行くなよ” 俺がそう言葉を続けようとした時である。 「キョン!まだ、起きてる!」 静寂をぶち破り、破壊せんばかりにドアを開けて、涼宮を先頭に、SOS団団員と文芸部部員が俺達の部屋に入り込んできた。 ・・・・・・・・・・・・部屋に再び沈黙が降りる。 俺と佐々木以外の人間に、俺達の姿がどのように写ったか、言わなくても想像は付くと思う。 「何してんのよ、あんたたちは!!」 涼宮の怒鳴り声が別荘中に響き渡った。 ほかの連中の反応は言うまでもない。 ここの部分だけは現実でなく、悪夢ぐらいにならないだろうか。 「キョン、ごめん。鍵をかけ忘れていたよ」 もはや、手遅れである。 流石にこの時間になると、みんな眠くなったのか、各自部屋に戻っていった。 私も自分の部屋に戻り、柔らかなベットへ身を沈めた。 あの後、一騒動だったけど、なんとか古泉くんが涼宮さんを落ち着かせ、とりあえず部屋に戻した。 キョンと二人で手をつないで、布団の上に横になっている姿を見れば、まあ、誰でも勘違いはする。 あんまり涼宮さんがうるさいので、キョンが少し逆ギレ気味だったけど、あれはおかしかった。 闇夜の静寂の中で、私は今までのことを思い出す。 最初の進学校を蹴り、キョンと同じ北高に来たこと。誰にでも、キョンを追って私は北高に入学した と思われた。事実そのとおりなんだけど、キョンは気づいていない。 それからの私の高校生活は充実している。それはキョンがいるから。北高に来ても、キョンがいなけ れば、どこに行ったって灰色の高校生活だったと思う。 そのために、”彼女”と契約した。もう惨めな思いは、自分を偽ることはしない。 ”次元固定因子は・・・・・・どこで発生するかわからない。しかし第一次因子の・・・・・・発生箇所は判明して いる” ”――鍵との接触は因子の発生を意味する。一次因子を固定する箇所は時空座標P-214ax―すなわち4月 のあの日” ”あなたの――望みを実行する” おかしな夢だった。声だけの夢なんて。 そして、その内容をろくに覚えていないなんて。 でも、あの声は、どこかで聞いたような気がする。それもつい最近・・・・・・ 部屋のカ-テンを開けると、今日も強い、暑くなるのを感じさせるような、強い日差しが差し込んできた。 顔を洗い、朝食を取るために部屋を出ると、ちょうど部屋を出たキョンに出くわした。 「佐々木、起きてたか」 「うん、今、起きてきたところだよ。キョン早くから起きていたのかい?」 「俺も今起きたところだ。夕べがやかましかったから、朝食に間に合うように起きれるかなと思ったんだ が、どうやら起きれたようだ」 キョンと一緒に食堂に行くと、まだ、誰も来ていなくて、私達二人は並んで席に座った。 「おはようございます」 新川さんとメイドさんが、挨拶をしてくる。私たちも挨拶を返す。 「皆さん、遅くまで楽しまれていたようですな」 少し、みんなはしゃぎ過ぎていたようだ。 「たまにはいいものですよ。お友達との思い出ははかけがいのない宝物ですから」 そう。新川さんの言うとおり、この夏の旅行は、私にとって、何より大切なキョンとの思い出になるだろう この時にしかない、永遠の一瞬。忘れることのできない、夏の記憶。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/2017.html
夜。寝付けずに佐々木は外を見た。 気持ちを吐露し、キョンを危険に遭わせる位なら諦めたほうがマシ。そして自分はその思いだけを抱えて生きるのだろうか。 またあの春の日のように。 「(気になって、様子を見に来たらこれかよ。こいつ、あいつと違うベクトルの馬鹿だな。)」 影は、佐々木を見て大仰に溜め息をついた。 「(女って生き物は、皆そうなんだよな。自分で勝手に結論出しちまう。男って生き物は、そいつに振り回される。 良くも悪くも、そんなもんなんだよなぁ。)」 そんなもんだけに、それに後悔しても後戻りしようとしない。何故なら結論を自分で出したから。 影は窓にいる佐々木に言った。 「本当に欲しいのものは自分の手で強引に掴み取れよ。お前の両手はそのためにあるんだぜ。」 それが聞こえたかどうか。そんなものは関係ない。 ただ待つだけの存在にチャンスがある程世の中は甘くないし、思いを理解して貰える程寛容でもない。 良くも悪くも、こいつは昔の自分に似すぎている。 世の中の全部を知ったような気になり、平々凡々と波風なく生きようとしていた、あの頃と。 目を開けば不思議なんて掃いて捨てる位転がってるし、そこを勝手にわかったつもりになっているだけだ。 「現に、今。お前は何一つとしてわからんガキだ。」 物分かりよく諦めるのが大人であるなら、弁護士なんて必要はない。そしてそうした抑圧された子どもなんて、いつか破裂する。 全て終わった後に、自分を見返して泣く羽目になるのだ。 影が去ろうとした時。 影に声をかけた存在がいた。それは、みくるであった。 「朝比奈さん。」 他人行儀の言い方。事が済むまで、区別をつける。そう言いたげな発言にみくるが顔をしかめる。 佐々木に言ったブラフ。それは。女としての嫉妬と言い換えてもいい。 ハルヒと結ばれた未来。そして『自分』がいる未来。佐々木が彼の中に欠片も存在しないはずの世界にも、影響があった。 彼が、欠片も存在しないはずの存在を救おうと奮闘している。彼女の願いでない行動で。 TPDDの私的濫用、情報統合思念体のインターフェースの協力に基づく事実改謬の実行犯。過去との接触により、一度は消されたとはいえ、違う未来を築く時空改変。 一歩間違えたら重犯罪だ。 320 名前:『Wanderin Destiny』 [sage] 投稿日:2013/03/18(月) 17 15 36.32 ID wPffOoWo [4/4] その危険を共に背負うパートナーが、自分でない事実。それはみくるにとって、辛い現実だった。 思い止まらせる為に、前以て佐々木に釘を刺したまではよかったが、それでも彼は止まらない。 そんなにも彼女が大事か?自分と築く未来を棒に振ってでも? 「……―――くん。帰りましょう。逃げるのもまた勇気です。」 時間犯罪者となりお尋ね者になるより、ここで止めたほうが絶対にいい。彼が時間犯罪者として生きるのは、ハルヒにとっても本懐でないはずだ。 すがるように影を見るみくる。 「……俺が最期のジョン・スミスにならなければ、あなたが苦しむ。」 「…………」 この『自分達』が存在する未来を築く為には、キョンがハルヒと結ばれ、かつ佐々木の改変を成功させる必要がある。 未来とは不確定であり、不安定なものだ。この『自分達』がいる未来をαとするなら、ここからの分岐はβ。 αはβに『干渉出来ない』だけで、αが『消滅する』わけではない。 それだけにハルヒは、この分岐に自分達を送った。仮にみくるがαを佐々木に選択させた場合。 この次元のハルヒが、また願うだろう。『自分達』が存在し、過去を救う未来を。そして彼は、ジョン・スミスとして過去に向かうだろう。 「……それでも、私は…………涼宮さんが泣くのを見たくないです…………」 「知っています。」 影がみくるを抱き締める。 誰より優しく、愛情深いみくる。仲間を守る為ならば夜叉にでもなるだろう。深い母性と、深い『敵』への排除は表裏一体だ。 「みくる。」 「…………」 みくるが顔を上げる。 「俺が最期のジョン・スミスになるかは、俺が決める事ではない。」 全てはこの世界の皆が決める事だ。 「だからこそ。俺が最期のジョン・スミスになる。……あなたを幸せにする為に、『俺はここにいる。』」 「―――くん…………」 強く抱き合う二人。口唇を合わせようとした二人の前に無粋な乱入者があった。 「時間を越えて受精した赤子がどうなるか……興味深い。」 ゼロ距離にいたセーラー服の影と…… 「痴話喧嘩は終わったか?姉さん、親友。」 呆れたように自分達を見ていた藤原であった。 「ひゃああああ!」 「どわああああ!」 佐々木の自宅、いや、御近所の家に一斉に電気がつく。 「迂闊。防音、不可視シールドを展開する。」 「ふえええ!――さん!みんな聞いていたんですか?!」 「――、お前怒ってないか?!目が凄いぞ!」 「怒っていない。」 「こいつらは、全く……!」 佐々木を見ると、佐々木は慌てふためいて窓を閉めている。 「(所詮痴話喧嘩だ。聞かれていても大した影響はなかろう。)」 藤原は佐々木を見ると、盛大に溜め息をついた。 To Be Continued 『Cross Road』4
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1823.html
「キョン、先日テレビCMで見たのだが」 それは佐々木にしては珍しい切り口から始まった。 「ボールドという洗剤は柔軟剤入りで、洗濯物がふわふわに柔らかく仕上がるらしいね」 「CMらしい誇張表現ではあるだろうがな」 「キョン」 「なんだ」 ああなんだ。着地点が見えた気がするぞ。 「キミの膝まくらも、柔軟剤を使えば柔らかくなるのだろうか」 「いやなら降りろ佐々木」 人ごみに酔ったなんて言い出したのはお前だろうが、なんで俺が辱めを受けにゃならんのだ。 俺は冗談めかして降ろそうとしたが、佐々木の奴はしっかり捕まえて離さない。 「キョン、キミは弱りきった親友を一人で放り出すような奴だったのかい?」 「弱りきった奴はそんな皮肉は言わん」 「すまないね。気が休まるとどうも気が大きくなっていけない」 確かにそんなもんかもしれん。 「くっくっく、そうかな?」 まあ笑顔じゃないお前ってのも想像したくないがな。 「うん? そうかい」 「そうしとけ」 「しっかし、それなら行楽地なんぞ来るべきじゃなかったな」 時は黄金週間ことGW。ベンチで佐々木を膝枕しながら、俺は遥か彼方で延々と行列が続く遊戯施設を見やる。 実際、ハルヒも高校最後の長い春休みにそんなような事を言っていたな。 『まったく。皆して同じところに行くから渋滞になるのよ! 他にいくところないのかしら』 夏休みに庶民プールに行った時もそうだが、お前だって似たようなもんじゃねえか、とは俺も流石に言わなかったが 大学入学後『だから今年のゴールデンウィークは、SOS団として独自の行動を考えます!』宣言をしたハルヒが 考え事をしすぎて足を滑らして骨折した時には、大いに心、もといツッコミをしたものだ。 そんなとこまで独自行動しなくていいだろうがお前は。 「くっくっ、そんな事を言って今日も彼女のお見舞いに行くのだろう? それまでには僕の体調も整えておくさ」 「そうかい」 「けど確かにそれは涼宮さんらしいね」 仰向けになり、俺に視線を合わせながら佐々木は言う。 「人は人の間で生きるからこそ人間と言うものだろ。流行だの廃りだの行楽地だの他人に流されるというのも当たり前さ。 けれど人気スポットだろうがマイナーな僻地だろうが人気作品の続編だろうが評価は自分でするものだ。 人はそれぞれ価値観が違う、ゆえに評価の仕方など人により異なるものだよ」 「そして『評価』する為には体験しなければ始まらない」 「だがハルヒは何やかやとイベント事をやるタイプだぞ?」 クリスマスだのバレンタインだの新入生勧誘だのとな。 むしろノリノリで流されてるじゃねえか。 「独自解釈を盛り込んでいると聞いたが?」 佐々木の目が細まる。 「彼女はイベント自体を彼女の色に染めて押し流すタイプさ。どんなイベントだろうと彼女の色に染めてしまうだろうね」 そのまま目を閉じ、体重を預けようとするかのように白い喉をそらす。 「大事なのは自分であり続け、考え続けることさ。そこに自分の評価基準を持っていれば本当の意味では流されない。 彼女のように逆に自分色に染めてしまったり、或いはただ静かに自分の価値観を守り続けるだけでもいい。 大事なのは自分である事をやめないこと。そして何より」 ニヤリと口の端がつりあがる。 「楽しみ続けることさ。短い人生、楽しんだもの勝ちってもんだろう?」 自分基準でね。そう付け足してくつくつと笑う。 自分は今まさに楽しいのだと言う様に。 「佐々木」 「おっと」 その目がなんとなく眩しかったので、俺はなんとなく覆い隠すように手のひらを置いてやる。 あくまでもなんとなくだが。 「ならとっとと体調治せ」 「うん」 「ただ、ね」 なんだまだ続くのかこれ。 「まあね。そう、たった一度きりの短い人生だ。誰だって有意義に生きたいし、有意義に生きてきたと思いたいものだろ」 「そりゃそうだろうな」 つまらないなんて誰だって思いたくないさ。 「だから流行の観光地やヒット作品って奴に群がるのかもしれないね」 仰向けのまま、くるくると細い指を回す。 「人気なものなら『これが正解なんだ』って自分で思い込み易いだろう? これは楽しいんだ、多くの人が認めているから楽しいんだ、そう自分も他人も納得させやすい訳だろう?」 「皮肉だな」 「そうでもないよ。僕だって来てみたかったからこうしている訳だしね」 多くの人が来る場所と言うのは、それだけの価値がどこかにあるからこそ、って訳か。 「だからって人ごみに酔ってちゃ世話ないぞ」 「そこは謝罪する。ただ」 それでも佐々木は笑み崩れている 「僕はそれでも構わなかったのさ。どんな待ち時間だって、キミと語らえばあっという間だからね」 「そんなもんか?」 「そうとも」 それが僕の「正解」だからね。 と、付け加えて俺の膝の上でくつくつと笑う。 「だからキョン、今度の休みはこのお返しをしてあげよう。今とまるっきり立場を入れ替えた体勢でね」 )終わり
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1665.html
キョン「佐々木は好きな球団とかあるのか?」 佐々木「キョン、たかだか野球チームの勝敗ごときに一喜一憂するのは時間の無駄だし愚の極みというものだよ」 中川(うわうぜえ) 岡本(せっかく野球トークで盛り上がってたのに) 国木田(だから佐々木さんと一緒に帰るのいやなんだよなあ) キョン「そうか。俺は阪神が好きなんだ」 佐々木「いや、良く考えれば僕も阪神が好きだった。・・・そう言えば親戚が阪神戦のチケットが2枚余ってるって言ってたのを 思い出したよ。キョン、良かったら一緒に行かないか?」 国木田「・・・」
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1383.html
俺は佐々木の誘いで梅田の通称ツインタワーにやってきた 「キミの通称と同じで、僕達の間では通称の方が有名だね。くつくつ」 「正式名称は何だっけ?」 「えーと・・・」 記憶力の良い佐々木でもそういうことがあるんだな。しかし、そうなると一つ気になることがある。 「もしかして、俺の本名も忘れたとか?」 「それは無いよ○○君。それとも下の名前の方が良いかな?」 さすがに忘れ去られてはいなかったみたいだ。良かった。 だが、高校からの友人は俺の本名忘れている危険がありそう。 ちょっと気分の良い俺は、ちょっとした軽口を叩いた。 軽口の冗談には違い無いが、内容がちょっとだけ問題だっったかな? 「本名でも上の名前でも下の名前でもどうでも良いけど、どうせならマイダーリンという枕詞をつけて欲しい」 「・・・」 「・・・」 俺のベタな冗談のおかげで、気まずい沈黙が流れる。 全然本気じゃないから、軽く流してくれませんか?佐々木さん。 「・・・」 「・・・」 何でもないほんの軽い冗談のつもりで、佐々木もそれがわかっていたが 佐々木の返した冗談のおかげで、その後俺は酷く誤解されることになる。 「マイダーリンキョン。今日は久しぶりにホテルに行こうか?どのホテルが良い」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」M・・・T・・・R,fujiko さすがに赤面した。 100%の冗談がわかっていても女の子にそんな事を言われたら誰だってそうだろう。 「ホテルだなんて、仮にも女の子がそんな・・・」 「何言ってるんだ。マイダーリン。久しぶりにホテルで一緒に食事しようという話じゃないか」 クスリと笑う佐々木は、本当に楽しそうだ。 「そうだな、すまん。そこは佐々木に任せる」 佐々木はベタ惚れの恋人に甘えるような甘い声で言う。そう演技しているだけなんだろうけど 「マイダーリン。僕を呼ぶ時はマイハニーと言って欲しいなー」 「いや、その」 「どうしたのマイハニー?さっきから顔が真っ赤じゃないか」 佐々木は本当に生き生きしている。 「いや、それは恥ずかしいかや止めてくれ。お願いだから」 「嫌だと言ったら?」 ずっとそう呼ばれたら、俺は恥ずかしくて外を歩けない。 「頼むから止めてくれ・・・マイハニー」 何故か、そう言わないと止めてくれないような気がした。 その時は、それで問題は解決したと思っていた。 俺の高校の某モブキャラカップルが目撃していなければ、それで解決していたはずなんだろうけど。 そんなこんなで、冗談を飛ばしているとツインタワーが見えた。 「着いたね」 「思ったよりでかいな」 「一度来てみたかったんだ。高い所に登るのは人間の本能なのかもしれないね。くつくつ」 「これって、ある事件で壊れたアメリカの国際センタービルを」 「それを参考にして作られたらしいね」 この高いビルの屋上が、明日まで開放中だ。 そして屋上でに上がった俺達だが、そこで予想外のことが起きた。 屋上では、佐々木の様子が明らかにおかしかった。 「どうした?佐々木」 「いや、何」 「どうした。顔が真っ青だぞ」 「別に高い所が怖いわけじゃない」 無理しているけど、怖いんだな。 「一旦降りて出直そう」 そう言って、佐々木と2人で降りようとした。 「待ってくれ、動かな無いでくれ」 俺に動くなと言った佐々木は、俺の腕にしがみ付く。 「私は怖くなんかない。せっかくのキョンくんとのデートなのに。ゆっくり見物したいの」 「お願い、キョンくん」 ドキドキドキドキ 佐々木の胸の鼓動を腕に感じる。それとも、鼓動が高まっているのは俺の方なのか。 強がるのは結構だが、大丈夫か佐々木。 「そうだな、しばらく歩くと気分も落ち着くかも」 「そうだわね」 しばらく、円周状の廊下だけの屋上をグルグル回る。 佐々木はよっぽど怖いのか、俺の腕をつかんだまま離さない。 しばらくすると、佐々木の顔色は随分明るくなり、二言三言話せるようになった。 でも、依然俺の腕をしっかりと胸に抱えたまま離そうとしない佐々木。 「しかし、思ってたよりでかいんだな」 これは、朝比奈さんには劣るが、充分あると言える。 「ハア?」 佐々木は俺の言う事が理解できずに、あっけにとられている。 「いや、何。淀川だよ。こんなでかい川だとは思わなかった」 「そうだね。関西一の大河だからね。西は大阪湾。東には生駒山脈、眼下には10階、20階を超えるビルを見下ろして」 「何本も橋がかかっているな。あれが、俺達が来る時使った電車の線路か」 「こうして見ると、大阪も広いんだね」 「そうだな」 世界には、もっといろんな所があるんだろうな。そして、日本の中にも、行ってない所がいくらでもある。 「そういや、アマゾン河やナイル河はもっとでかいんだろうな」 「見てみたい?」 「うん、すごく」 「僕もだよ。僕はキミといつか一緒に見てみたいと思う。キミの方はどうかな?」 まるで、婚前旅行を申し込むような雰囲気だ。 「俺も、佐々木と一緒に見てみたいと思う」 「じゃあ、約束だよ。私とキョンくんの」 そうして、俺は佐々木と指きりをした。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/2075.html
ハルヒ「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番美しいのは誰?」 鏡(キョン)「ま、そうだな。とりあえずお前でない事は確かだな。鏡見たらわかるだろ?」 ハルヒ「……叩き割るわよ?」 鏡(キョン)「オーケー、わかった。ちゃんと答えよう。朝比奈さんに決まってんだろ。わかりきった事聞くな。」 ハルヒ「有希。ハンマーを。」 パリーン ハルヒ「鏡を新調したわ!鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番」 鏡(谷口)「性格が醜いのは、初期のお前だよ。」 ハルヒ「あああああああああああ!」 パリーン ハルヒ「……か、鏡よ鏡よ鏡さん……グスッ……世界で一番美しいのは……グスッ」 鏡(佐々木)「あなたでいいわよ。ところで涼宮さん、キョンが粉々になっていたんだけど、何か知らない?」 ハルヒ「」 第一部 完! ハルヒ「毒リンゴを食べたわ!王子様が来るのを待つのみね!」 キョン「こ、こんな所に死体が……!」 佐々木「美しい姫なのに、可哀想に。しかし、袖擦り合うも多少の縁という。丁重に葬ってあげようか、キョン。」 キョン「ああ。」 第二部 完! キョン「死体にキスか……俺は変態じゃないんだが。」 佐々木「では予行練習をしておくか。」 長門(魔女)「私も参加する。許可を。」 ………………………………………… 佐々木と長門は幸せに暮ら…… ハルヒ「こんな世界、認めないわ!」 そうとしましたが、世界改変により、なかった事にされましたとさ。 ………………………………………… 佐々木「涼宮さん、顔色悪いわよ?」 ハルヒ「ちょっと夢見が悪くてね……」 END
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/572.html
「桜」 散る桜は美しい。日本人に流れる遺伝的な何かがそう思わせるのか、それとも、卒業式を間近に 控えた俺にも、なにがしかのメランコリックな感性が働いているのか、まったくもって不明だったが、 風に舞い散る薄紅色の花びらは確かに俺の心に響いていた。 「綺麗---だな」 だから、自然に賞賛が口からこぼれた。その言葉が聞こえたのだろう。 佐々木は静かに振り返った。舞い散る花びらの中、 もうすぐ着納めになる中学の制服を着た佐々木は同意を込めて、微笑んだ。 「ん、そうだね。冬には冬の美しさがあるが、やはり僕は春の美しさが好きだな」 俺は夏が好きなんだ。寒い時期は早く終わってくれればいいとしか思えないがね。 「キミも日本人なら四季折々の風情を、その時々でちゃんと楽しむぐらいの余裕を持ちたまえよ」 この一年、そんな物を楽しめた記憶はないね。 こちとら、受験社会の底辺を青色吐息で生きてきたんだ、そんな余裕はなかったぜ。 「やめろよ、キョン。すべては終わったことじゃあないか、もう僕らは受験生なんかじゃない。 この春から高校生になる卒業間近の中学生なのだ。 今更、受験なんて言葉を僕の耳に届かせないでくれたまえ」 両手を上げて降参し、心ばかりの謝罪を述べる。確かに、もう終わった話だ。 昼前まで惰眠をむさぼっても、何も言われない自由が俺の元には戻ってきたのだ。 願わくば、この自由を一日でも長く保っていたいもんだ。 「キミの友人として、忠告させて貰うが、そういう風に自堕落に時を浪費するのはあまりよい習慣 とはいえないぞ。諸行無常、世界を見回してみたまえよ。昨日と同じ今日なぞないのだ。キミが 惰眠をむさぼる間に、桜は花開き、散っていく。ふくらんでいくつぼみの持つ生命力も、花散った 後に分かる若葉の美しさも感じ取ろうとしなければ分からないものだ」 うへぇ、ご説ごもっとも。肩をすくめ、両手を制服のポケットに突っ込む。 佐々木にお説教されるのも、これが最後かもしれないからな。精々心に刻ませてもらうとするよ。 「そうだね、キミに投げる言葉もすべて最後かと思うと、とても大切に感じるよ」 そう言って、佐々木は顔を伏せた。そうだった、コイツは市外の私立に行く。 俺の偏差値じゃ逆立ちしたって届かないような進学校。俺は北の方に見える山際の県立高校だ。 これから毎日、あのハイキングコースを行くのかと思うと、めまいがする。 そう、こんな毎日も、もうすぐ終わる。 今日が先月なら佐々木を乗せて塾に自転車を走らせている時間だ。俺がコイツを自転車の荷台 に載せることももうないのだろう。そして、きっと俺はすぐに自転車の軽さに慣れてしまうのだ。 その時、風が吹いた。佐々木が髪の毛を軽く押さえる。風にひるがえるスカート、桜の花びらが 俺の視界を閉ざす。俺はなぜだか、佐々木がそのまま風に消えてしまうのではないだろうか、 そんな気持ちになった。 思わず、右手が伸びた。 「きゃっ」 佐々木が可愛い悲鳴を上げてうろたえた。いや、うろたえているのは俺の方だ。 何で俺は佐々木の手をつかんでいるんだ。これが桜の魔力だろうか。 「どうしたんだい急に」 佐々木はそう言って微笑みを返す。俺の手をふりほどいたりはしない。 「自転車に乗ろう」 は? 俺は何を言っているのだ。わけがわからない。ほら、佐々木が困っているじゃないか、 はやく取り消すんだ。 佐々木は、唇の端を器用に曲げて、悪戯っぽい笑みを漏らした。 「いいね、こんな陽気と桜の中をサイクリングするのはとても気分がいいだろうね。ねぇキョン、 もちろんキミの自転車に僕を乗せてくれるのだよね」 なぜだか、急に気恥ずかしくなり、俺は佐々木から視線と手を外し、ぶっきらぼうに承諾を告げた。 使い慣れた自転車を取って来るべく、もと来た道を戻る。その時、そっと左手に手が添えられた。 「僕も行くよ、キョン。一緒に」 佐々木の手は小さく、俺の手のひらにすっぽりと包まれていた。ああ、そうだよな。 佐々木は女の子なんだよな。ずっと、分かっていていいはずのことが今更のように分かる。 だが、それももう遅い。 もうすぐ、別れがやってくる。そして、それをどうにかすることはできなかった。 もちろん、俺たちの関係を破壊してしまえばそれは可能なのかもしれない。 いや、きっと可能なのだろう。 だけど、そうしようとは思えないのだ、俺には。そして佐々木にとってもそうだと確信できた。 自転車にまたがる。慣れたもので、佐々木は横座りでちょこんと荷台に座った。左手を腰に回してくる。 自転車を揺らさないようにゆっくりとペダルを踏み込んだ。 舞い散る桜の中、ふたりで自転車を走らせた。桜の花びらが綺麗だった。そう、散る桜は美しい。 その時、背中にぎゅっと佐々木の頭が押しつけられた。 「すまない。しばらく、振り返らないで、声を掛けないで、背中を貸していて」 その声には応えなかった。だけど、気持ちは伝わっている。佐々木とはそういう関係だ。 ああ、いくらだってそうするよ。熱い物が胸の奥と背中に染み渡った。 桜舞い散る春の日のことだった。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/350.html
国木田「佐々木さん、いいこと教えてあげよっか」 佐々木「なんだい?国木田」 国木田「実はね、キョンはカチューシャ萌えなんだ」 佐々木「萌え?」 国木田「そして、眼鏡属性あり」 佐々木「ふーん……で、何故それを僕に?」 国木田「別に……」 佐々木「くっくっ……変なの」 次の日 キョン「どうした?佐々木、急に眼鏡なんか掛けて」 佐々木「いや、僕は元々近眼だったのさ」 キョン「へえー」 佐々木「………………」 キョン「…………何だ?」 佐々木「いや、あの……カチューシャ……」 キョン「あ?あぁ、良いんじゃないか?」 佐々木「…………それだけ?」 キョン「あぁ」 佐々木(おかしいなぁ……) キョン(変な佐々木……) 休み時間 国木田「佐々木さん、まんまと引っ掛かったね」 佐々木「国木田!これはどういう……」 国木田「少なくとも、僕の中では、君がキョンを好きなことが確定したわけだ」 佐々木「あ!……そんな……」 国木田「ふふふ……何してもらおうかな」 佐々木「くっ……」 国木田「とりあえず、今日一日ノーパンで過ごして」 佐々木「な!……」 国木田によって、乙女の純情を利用されてしまう佐々木。 果たして彼女の操はどうなってしまうのか! 俺達の闘いはこれからだ! おしまい